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認知行動療法カウンセリングとは?治療方法や治療の効果を解説

認知行動療法(CBT)とは、精神的な疾患や心の問題の原因となるネガティブな自動思考(思い込み・マイナスのスパイラル)にアプローチして症状を和らげるカウンセリング手法の一つです。

1対1で専門家のカウンセリングを受ける方法のほか、グループでおこなう方法やセルフケアとして個人でおこなう方法など柔軟性の高い治療法です。

この記事では、治療の進め方や効果など認知行動療法について詳しく解説していきます。

 

 

認知行動療法とは

心理カウンセリングにおける認知行動療法(CBT)とは、対人関係などによって生じてしまうネガティブな自動思考(悪しき思い込み・マイナスのスパイラル)に気付いて、それを修正し、行動面でも建設的な方向に切り替えていく治療法です。

元は軽度のうつ病に対しておこなわれていました。

薬に依存せず心の負担を軽くするもので、さまざまな精神疾患でも客観的な効果が確認されてます。

〈認知行動療法が有効とされる疾患の例〉

  • 双極性障害(躁うつ病)
  • 社交不安障害
  • 統合失調症
  • 強迫性障害
  • パニック障害
  • 摂食障害
  • PTSD(心的外傷後ストレス障害)
  • 不眠症

認知行動療法はこのような病気に至る当人の認知の歪みを変えるためにおこないます。

そもそも認知とはものの見方やその人の考え方の特徴です。

水半分入ったコップを見て「半分も入っている」とプラスに捉える人もいれば、「半分しか入っていない」とネガティブに捉える人もいるように、個人によって捉え方は変わります。

とくにストレスが多い状況では心が疲弊し、どんなことも悲観的にしか捉えられなくなってしまい認知に偏りが生じます。

例えば、人が笑っていると自分が笑われているのではないかと感じ「自分の行動はおかしいんだ」「笑われるような行動をする自分はダメなんだ」というような心の中で自動的に形成されるネガティブな考え方です。心が疲れていると周囲の人と自分の認識にずれが生じたときに悪い方に考えずにはいられません。

また、0か100でしか考えられなかったり、一度の失敗ですべてがダメだと思い込んだり極端な思考になってしまうこともあります。

認知行動療法はこのような心の負担になるネガティブな思考の癖を変え、対処法を見いだし生きづらさを改善していきます。

 

 

認知行動療法の治療方法

認知行動療法は、悪い方へイメージしてしまう考え方を正しい認知へ導く治療です。

厚生労働省のうつ病の認知療法・認知行動療法 治療者用マニュアルによると、治療は6つのステージに分かれており、30分以上の面談を16回~20回おこなうと記されています。

厚生労働省のうつ病の認知療法・認知行動療法 治療者用マニュアルをもとに各ステージの目的を簡単にまとめました。

 

症例を理解する 患者さまの症状や経過、発達歴などを問診し、病理や認知行動療法の重要性を理解してもらう
症例の概念化 治療目標の設定 問題点や目標を話し合い、具体的なスケジュール表や活動表に落とし込む
気分・自動思考の同定 日常的にネガティブな自動思考になる原因を特定し、ポジティブな思考に置き換えるようトレーニングする
自動思考の検証 自動思考による人間関係や問題解決への対応力を検証し、認知の偏りを修正する
スキーマ(信念)の理解 基本的な信念や人生観などその人が持つ基本的な思考構造を話し合い、根本的な考え方を修正する
終結と再発予防 治療のふりかえり、再発を予防する対策を立てる。必要があればフォローアップの面談をおこなう

参照:厚生労働省のうつ病の認知療法・認知行動療法 治療者用マニュアル

このような流れにそって、カウンセラーとの対話だけでなく日常生活におけるホームワークを通して、患者さま自身の不安に対して向き合い、認知を修正していきます。

 

 

認知行動療法を受けることで得られる5つの効果

認知行動療法を受けると考え方や物の見方が変わります。具体的にどのように変わるのか、その効果を具体的に見ていきましょう。

 

1. 想像に振り回されず物事を冷静に捉えられるようになる

認知行動療法を受けると想像に振り回されることがなくなるため、事実だけを冷静に捉えられるようになるという効果があります。

いらぬ心配をしなくてもよくなるため、不安感が軽減していきます。

ネガティブな自動思考に陥ると、どんなことに対しても否定的になってしまいます。そのため、不安が積み重なったり周囲との認識にズレができてしまったりと、生きづらさを感じてしまう原因となるのです。

認知行動療法はネガティブに考える癖を認知し、修正するトレーニングなので、変な憶測がなくなりフラットな状態で物事を見られるようになります。

 

2. 前向きに行動できるようになる

認知行動療法を受け、決めつけや極端に考えてしまう癖を広い視野で捉えて修正できるようになれば、前向きに行動できるようになります。

ネガティブな自動思考を持ち続けていると、疑心暗鬼になり、人と会うのが怖くなったり自分に自信がなくなったりと、社会的生活に悪影響が及びます。ストレスが積み重なれば精神的な病気を発症するおそれもあるでしょう。

自動思考を修正できれば勝手にネガティブな考えに向かうことがなくなり、ありのままの事実を冷静に受け入れたうえで、未来に向かって目標をもって行動できるようになっていきます。

 

3. ストレスを軽減して精神疾患を改善できる

不安や恐怖は薬で一時的におさえることもできますが、さらに自分自身と向き合い認知を変えていくことができれば根本的な解決につながります。

認知行動療法はその人のペースにあわせて、段階を踏んで認知の修正をおこないます。

ストレスとなっている思考パターンを修正し、心の負担が軽くなればストレスが減り精神疾患も改善に向かうものです。

 

4. 心のバランスが整い精神疾患の予防につながる

認知行動療法で自らの考え方の癖を認識していれば、心のバランスを意識的に整えることができるため、精神疾患の予防につながるでしょう。

自意識過剰な性格や気にしやすい性格、疑り深い性格は、ストレス状況の中で不安障害やうつ病などの精神疾患につながるものです。自らの思考の傾向性を自覚しておくことで、精神的な疾患にかかる前に不安やストレスへの対応ができるようになります。

 

5. 精神疾患の再発予防の効果がある

うつ病や不安障害などの精神疾患は、薬で症状が改善したからといって服薬を中断すると、再発の可能性が高いといわれています。安定した精神状態をキープしていくには、自身のストレスや不安に対する向き合い方を知る必要があります。

認知行動療法によって自らのネガティブな思考パターンを自覚し、それを修正していく作業を習慣化することは、ストレス耐性を高め、主体的な生き方を身につけるということなのです。認知行動療法を習得しておけば、寛解後の再発防止にも役立つでしょう。

 

 

セルフで行う認知行動療法

認知行動療法は、自らの心の変化を自覚しつつ行う心理療法であり一人で行うことも可能です。

しかしながら、自らに向かい合うことは、多くのエネルギーを使うことでもあります。

よりスムースに認知行動療法を実践するためには、まず専門家によるセミナーや入門書などで基本的なやり方を習得したうえで実行するのがいいでしょう。

 

セルフで行う方法

自分自身で認知行動療法をおこなうのであれば思考記録表(ネット上にあり)という用紙の活用がおすすめです。

今現在かかえている状況や不安や恐れなどを用紙に書き出すことで、それに対する対処法が見つかりやすくなるからです。

客観的視点から自分自身を見つめ直し、偏った思考に気が付くことで、今まで思いつかなかった良き考えや行動も導き出せます。

また、一見すると試練に思える状況の中には、ネガティブな側面だけでなく、自己成長につながるようなポジティブな側面も含まれていることに気づけるようになるでしょう。

 

集団認知行動療法

同じ悩みを持つ人と共にグループでおこなう集団認知行動療法もあります。セルフで、あるいは専門家と一対一でやる認知行動療法よりも、集団認知行動療法の方が治療効果を引き出せる場合も多いのです。

集団認知行動療法では、個人では気づきにくい認知の偏りや歪みを、グループでの交流の中で客観的に見つめられるというメリットがあります。またモデリング効果という、同じような問題意識をもつ他者の考え方を参考にしたり、自分以外の視点で不安に対する対処法に気付いたりというメリットがあります。

このように集団認知行動療法では、一つのできごとに対しても人それぞれのさまざまな捉え方があることが実感できるでしょう。

 

 

認知行動療法を始める際に把握しておくべきこと

認知行動療法は心の問題を根本的に改善する効果的な治療法です。しかし、治療を受ける前に認知行動療法がどの医療機関でも受けられるものではないことや、治療にかかる期間や心構えなどについて把握しておく必要があります。

 

速やかに効果が期待できるとは限らない

認知行動療法は、精神分析療法などに比べると短期間のうちに効果が期待できる心理療法です。

しかしながら、行動や思考の癖は長い間積み重ねた結果なので、回復には時間がかかることが多いことも事実です。

また、本人に治そうという気がなければ効果は実感できないでしょう。人によって認知を変えるのにかかる時間はそれぞれ違うものです。

焦らずじっくり自分に向き合い、一歩一歩解決していこうという自覚が必要です。

 

回数の目安

前述の「認知行動療法の治療法」でも述べたように、認知行動療法はいくつかの段階を踏みながらおこないます。

カウンセリングの回数は16回~20回が目安とされていますが、症状によってはそれ以上の回数が必要になることもあります。

 

認知行動療法を受けられる医療機関

認知行動療法を保険適用で受けられる医療機関は少なく、ほとんどが自費です。

認知行動療法を受けるには精神科や心療内科を受診し、主治医から認知行動療法を得意とするカウンセラーを紹介してもらうことが多いようです。

 

認知行動療法とアドラー心理学

10年ほど前に『嫌われる勇気』というアドラー心理学の本がベストセラーとなりましたが、ユダヤ的な背景をもつアドラー心理学は今一つ日本には定着していないようにも思えます。

アドラーは身長が155㎝ほどで白人としてはかなり低身長であることがコンプレックスになっており、「どうせ私は…」というネガティブな自動思考が心の中にありましたが、ある時、小男である自分がグループセラピーの中に入ると、場の雰囲気が和んでセラピーがスムースにいくことに気が付きました。

そして、背が低いことは自らの短所ではなく長所であるとポジティブに認知を修正し、その長所を生かしてもっと行動していこうということで世界中を飛び回るようなりました。

このアドラーの生き方こそ、認知行動療法のすばらしい実践例なのです。

認知行動療法は、アドラー心理学から宗教的な背景を抜き去ったものであり、日本人にも適した心理療法なのです。

 

 

本来の自分らしい生き方を見つけるために認知行動療法は効果的

認知行動療法は、考え方の癖を自覚し、意識的に変えていくことで精神的な疾患の原因となるストレスや不安に対する対処法を把握し、心の負担を軽くするカウンセリング方法です。

紙に書き出すことによって客観的な視点で自分自身を見られるようになるため凝り固まって狭くなった思考の幅が広がることが期待できます。ネガティブな自動思考をポジティブな思考に置き換えることは、心の負担軽減につながり、良き行動変容を引き起こすことにもなるのです。そして、そのような認知行動療法の手法を習慣化することにより、ストレス耐性が高まり、未来に向けて主体的に行動できるようになります。認知行動療法は単に当面の悩みや問題の解消のためということではなく、人生の中で直面する病気、対人関係、家族、お金などの様々な問題にも応用可能なものです。

心理相談室セラペイアでは精神分析と認知行動療法、家族療法を組み合わせたFAPという手法のカウンセリングで多角的に心の問題の本質にアプローチし、生きづらさを解決していきます。

心の不調を根本的に解決したい方はぜひ、心理相談室セラペイアへご相談ください。

大田区でカウンセリングをお探しの方は、蒲田駅・大森駅最寄りの心理相談室セラペイアまで、ぜひ足を運んでみてください!

 

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