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三島由紀夫の「豊饒の海」は世にも奇妙な物語

■2018/11/04 三島由紀夫の「豊饒の海」は世にも奇妙な物語

三島由紀夫の大作「豊饒の海」初の舞台化。

大正時代に20歳で病死した貴族の御曹司が、三度生まれ変わって登場するという数奇な輪廻転生のストーリー。

右翼思想に傾倒した文豪でありつつ、同性愛者であったともいわれる三島由紀夫の心の葛藤が投影された作品です。

物語の最後の場面で、尼僧になり年老いた主人公の恋人が御曹司の友人の思い出話しに対して「それも心々(こころごころ)ですさかい」といいます。

分かりにくい表現ですが、すべての出来事は事実ではなく、事実無根の空想話だったことを示唆して、煙に巻かれたように話が終わるのです。

タモリがストーリーテラーをする「世にも奇妙な物語」としてテレビ化もできるような話なのです。

三島は仏教の唯識思想を根底にしてこの作品を書いたといわれます。

唯識思想とは、心の活動こそが普遍的なものであり、この世の現象はすべて夢幻に過ぎないという唯心論的な考え方です。

唯識思想は、奈良の興福寺や薬師寺の法相宗の教えなのですが…法相宗のお坊さんたちも分かっているのでしょうか?…大変難しい世界です。

その唯識思想では、フロイトのいう個人的な無意識の世界をマナ識、ユングのいう集合的無意識の世界をアーラヤ識と名付けています。

私はかつてこの唯識思想を心理療法に応用することはできないかと考え、唯識思想の第一人である横山紘一師のセミナーを受講したことがありますが、分かったようでわからないような…

岡野守也という仏教心理学者もそのような試みをしているようで、著作を読んでみましたが、今一つでした。

この作品の結末は、唯識の深淵な世界を暗示しているのか、それとも単に死期の迫った三島が書き急いだのか、評価の分かれるところでしょう。


 
 


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