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アントニオ猪木とアドラー心理学

■2023/08/10 アントニオ猪木とアドラー心理学
「燃える闘魂　アントニオ猪木展」が新宿の京王百貨店で開催中。


アントニオ猪木こと猪木寛至(かんじ)は、1943年横浜市鶴見区生まれで、13歳で家族とともにブラジルに渡ります。

ブラジル遠征中の力道山にスカウトされてプロレスラーとなり、引退後も政治、実業家として活躍し、昨年の10月に79歳で亡くなりました。
 
表面的にみると、自信溢れる「炎のフアイター」の人生でしたが、見方を変えると、コンプレックスとの戦いという側面もみえてくるのです。


コンプレックスという言葉を世の中に広めたのは、心理学者アルフレッド・アドラーです。
「
complexという言葉は、「劣等感」と訳されることがありますが、これは不正確なもので、「複雑な」という形容詞としても使われるとおり、「心の中が複雑にモヤモヤしている状態」を指す言葉です。
 

アドラー自身、白人男性としてはかなり背が低い(155センチ)というコンプレックスを抱えており、世界的な名声を博した後でも大きな悩みでした。

しかしある時、低身長の自分がグルーブの中に入ると、場の雰囲気が和やかになりセラピーがやりやすくなることに気が付きました。

そして、背が低いことは自らの短所ではなく長所であると捉え直し(リフレ―ミング)、この長所を活かしてもっと行動していこうという思いになりました。

そのライフスタイルこそアドラー心理学の基なのです。
 

アントニオ猪木もまたコンプレックスを抱えていました。

①ライバルであるジャイアント馬場に対するコンプレックス

まず猪木のコンプレックスとは、同日に入門したライバルのジャイアント馬場に対するものです。

猪木は191センチの大男でしたが、なんと馬場は猪木を上回る209センチ。

デビュー後も、圧倒的な体格をもつ馬場は次期スターとして期待されて、すぐに渡米し、英才教育を施されます。

対馬場戦では猪木は負け役となりました。

このままでは馬場の上にはいけないということで、日本プロレスを脱退し、新日本プロレスを設立し、異種格闘技路線を打ち出していきますが…

アリ戦では数十億の借金をかかえ、「馬場は頭がいいが、猪木は馬鹿だ」と批判されます。

それでも、「過激なプロレス」を推し進めていきました。
 

②アゴに対するコンプレックス

猪木のトレードマークは、突き出たアゴですが、下顎前突症ということで若い頃はそのことで悩み医者にも通っていたようです。

しかし、この突き出たアゴは西洋では「王様のアゴ」であることを知ります。

ヨーロッパの支配者ハプスブルク家は、純粋な血統を守るために、同族結婚を繰り返したため、アゴにも特徴が出てしまったようです。

いわゆる「ハプスブルクのあご」です。

師匠の力道山には「オイ !　アゴ ! 」と怒鳴られ、外人レスラーからは「ペリカン野郎 ! 」と挑発されたのですが、そのアゴで猪木は名前を売っていきました。
 

 

③プロレスは八百長であるという風評に対するコンプレックス

プロレスは八百長ということで、大手新聞はプロレスを正規のスポーツとしては取りあげませんでした。

確かに、2001年に長年新日本プロレスのレフリーを務めたミスター高橋が暴露本を出し、プロレスの真実が明らかにされました。

プロレスがショーであるにしても、猪木はそのショーを使って、人間として生き方の真実を示そうとしました。

因みに、アリ戦は、紛れもなくガチンコ勝負でした。

そのアリ戦によって、猪木は中東や欧米など世界的な人脈を得ていきます。

参議院議員となり、湾岸戦争時に、イラクで「スポーツと平和の祭典」を行い、在留日本人の開放に道を開きました。

また、力道山の祖国である北朝鮮でプロレスの興行を行い、人々を勇気づけました。

 
10年ほど前に「嫌われる勇気」というアドラー本が出てアドラーブームが起きましたが…

人に嫌われてもいいから個性的に生きろというメッセージとしてアドラー心理学は誤解されてしまっているのです。

アドラー心理学の本質に関わるキーワードは「共同体感覚」というもので、人とのコミュニティ、地球的なつながりということが最も大切だということなのです。

そして、アドラーは、その上での個性化を目指したのです。

アドラー心理学は、人との交流を広めつつ、コンプレックスを克服して自らの道を力強く歩んだアントニオ猪木の生き方そのものなのです。





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