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フロイトとアドラー　臨床心理学の歴史はユダヤ人のトラウマから

■2024/02/02 フロイトとアドラー　臨床心理学の歴史はユダヤ人のトラウマから: ユダヤ人の心の中には、ナチスドイツから受けたホロコーストの記憶が根深くあります。

そして、さらに遡って2000年前からイスラエルの地を追われ、民族は散り散りに離散して異郷の地での過酷な迫害の体験が彼らの遺伝子の中に刻まれています。

さまざまな学問分野で活躍するユダヤ人ですが、

自らの心を癒すために、臨床心理学の分野でもユダヤ人は大きな功績を残しています。

初期臨床心理学での巨頭と呼ばれるのは、フロイト、アドラー、ユング…

ユングはスイス人ですが、フロイトとアドラーはユダヤ人です。

それから「夜と霧」の著者であるユダヤ人精神科医ヴィクトール・フランクルも忘れてはいけませんが、

今回はフロイトとアドラーについてお話します。

ジクムント・フロイトは、1856年オーストリアのユダヤ教徒の毛織物商人の家に生まれます。

フロイトの精神分析は、過去のトラウマを探り当てて、顕在化することを中心にしています。

その根底には、ユダヤ人が信奉する旧約聖書の教えがあります。

詩編の例えば詩編139編は、胎児期のトラウマを神様に癒して頂こうとする祈りの言葉であり、精神分析の思想に影響を与えていると思います。

またフロイトが重んじた夢分析は、創世記41章でヨセフが、エジプトのファラオの見た夢を解き明かした話が思い起こされます。

当初フロイトの過去に原因を求める考えを支持していた盟友のアルフレッド・アドラーでしたが、

次第に、全く逆に未来を志向するアドラー心理学を確立していきます。

アドラーは、臨床家として世界的に有名になった後でも、白人男性としてはかなり小柄な身長155㎝であることにコンプレックスを感じていました。

しかし、あるときグループセラピーの場で自分がその中に入っていくと場の雰囲気が和やかなものになることに気が付きます。

自分が小さいことは自らの短所ではなく長所であると捉え、前向きに歩んでいこうと考えられるようなったのです。

そのアドラーの生き方そのものがアドラー心理学の本質です。

フロイトの原因論に対して、アドラーは目的論の立場をとったのです。

10年ほど前に「嫌われる勇気」というアドラー心理学の本がベストセラーになりましたが、誤解されてしまうタイトル名です。

アドラー心理学の教えは、まず人との調和を図ることが大前提で、その上で、個性を発揮していこうとするものであり、闇雲に人から嫌われれることを奨励する教えではありません。

「嫌われる勇気」の内容にはそのことがはっきりと書かれています。

タイトルは出版社が決めたものなのでしょう。

フロイトもアドラーも時代の寵児となったのです。

しかしながら、1938年頃からナチスの迫害が強まります。

精神分析学派のユダヤ人治療家たちは主にブルジョワの婦人たちをクライアントにしていて、経済的に裕福でした。

ですから、お金を積んでアメリカに亡命(フロイトはイギリス)することができました。

しかしながら、比較的貧しい階級の人々のケアに関与していたアドラー学派の多くのユダヤ人治療家は、ナチスに殺されてしまいます。

悲劇の歴史をもつアドラー心理学なのです。

しかしながら、後にアドラー心理学の影響を受けた認知行動療法は、科学的に効果が認められる唯一の心理療法として、現在は精神分析療法以上に世界に広まっています。

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