落ち着きがない・締め切りや期限・時間に間に合わない・空気が読めないと人からいわれるといった症状…それもしかしたら発達障害が原因かもしれません。
発達障害は生まれながらにして持っている脳の障害が主な原因といわれており、人によってその障害の程度は異なります。
学生時代は気づかなかったものの、社会人になって気づく大人の発達障害も最近では増えている傾向にあるようです。
本記事では大人の発達障害とは?といったところから、その症状や特徴、治療法についてご紹介します。
相談先についてもあわせて解説するので、もしかしたら発達障害かも?と不安な方はぜひ参考にしてくださいね。
大人の発達障害とは
発達障害とは、主に生まれつきの脳の障害により、対人関係がうまくいかない・集団生活が苦手・特定の分野の事柄が処理できない・独特のこだわりをもつ・落ち着きがないといった精神障害の総称です。
「主に」と書いたのは、未だ細かなメカニズムは分かっていないからです。
以前は後天的な養育環境によって生じたものとされ、お母さんが責められた時期がありましたが、脳科学が進むにつれて、先天的なものが原因とされるようになりました。
しかしながら、全て先天的、遺伝的なものが原因とも言い切れないようです。
母親の喫煙、高齢出産、農薬、ワクチン、大気汚染、人工甘味料なども関係するのではないかという報告があり、さらなる研究が必要なのです。
日本において、一つの疾病として発達障害が医療の中で認識されてきたのは最近のことです。
ですから、大人の発達障害とは、幼少期から発達障害としての診断を受けることなく見過ごされ、なぜこんなに生きづらいのかという疑問をもったままで、大人になってしまったケースのことです。
会社内で周りとなかなか溶け込めなかったり、友達に「空気読めない(KY)よね」といわれてしまったり、といったことはよく起きることです。
さらに社会人にとって、発達障害の症状は、職場内での対人不和や顧客関係でのトラブルにも直結してしまい、うつ症状などの疾病を併発することにもなりえます。
学生のときは「そういう子」で片付いていた場面でも、社会では深刻な生きづらさの問題となってしまうのです。
KYやアスペルガーといった言葉が流行語になった現代では、もしかしたら自分も発達障害なのかも…と思う人も多いのではないでしょうか。
大人の発達障害の種類と症状
大人の発達障害の現状を知った次は、大人の発達障害の種類とその症状について解説します。
発達障害の種類は大きく分けて3つで、「ADHD」「ASD」「LD」です。
それぞれ苦手な事柄が違ったり、症状が現れるシーンが違ったりと特徴があるので、どれに自分が当てはまるのかチェックしてみてくださいね。
ADHD
ADHDとは、日本語では「注意欠如・多動性障害」といわれる障害です。
もっとも、多動(HD)、落ち着きがないというような症状は子供の頃に消失してしまうことが多く、大人にとっての問題は主に注意欠如(AD)でしょう。
症状
注意力が散漫になり、一つのことに集中しづらい、仕事の期限や頼まれていたことを忘れてしまう、といったことが代表的な症状として挙げられます。
注意力が欠如していれば、仕事上でのミスが増えたり、対人関係で信用をなくしたりします。
人と待ち合わせしていても同じ場所で待つことが難しい、といった大人でも多動的な行動がみられる場合は、躁鬱だとか不安障害だとか他の疾病であることも疑った方がいいでしょう。
ASD
ASDとは、日本語では「自閉スペクトラム症」といわれる障害です。
子供の20~50人に1人がこの自閉症スペクトラム症といわれておりますが、先に述べたとおり、診断が一般化したのは最近のことで、見過ごされたまま大人になることも少なくありません。
症状
対人関係が苦手、空気が読めない、臨機応変に対人関係ができない、常識が分からない、強いこだわりをもつ、五感が過敏…といった幅広い障害の総称です。
スペクトラムとは、境界が曖昧で連続しているような状態を意味する言葉であり、以前はアスペルガー障害と呼ばれていたものも今は自閉症スペクトラムの中に含まれています。
ですから、一つの疾病というよりも症候群(シンドローム)といった方がいいかもしれません。
前述のADHDとも明確な区別はできず、重複する部分もあるものなのです。
子供の頃は、「そういう子」という程度であっても、社会人としての生活の中では、生きづらさを感じてしまいます。
相手の考えていることや思っていることを察することが苦手で、なおかつ自分の意見も伝えるのが不得意…
自分の興味があることであれば高い集中力やこだわりをみせる一方、興味の薄いものに対しては興味を示さない…
適格な指示がないと臨機応変に業務をこなすことができない…
騒がしいところが苦手…
特定の色彩の衣服しか着ない…
その症状はさまざまで幅広くかなり個人差があるのです。
LD
LDは、日本語では「学習障害」といわれる障害です。
その名前の通り、学習時の障害ですから、学生時代に気づくケースが最も多いものです。
症状
LDは「読む」「書く」「計算する」「話す」のうち、一つか若しくは複数をうまく遂行できない症状です。
「読み書きはできるけど、計算がどうしても苦手」「漢字は読めるけど、書くとなるとでてこない」といった症状です。
「困難だというけど、ただ苦手なだけでしょ!」と思われるケースもあり、周りから理解してもらえない障害でもあります。
大人になってから困るケースでいうと、業務で使う資料のグラフが読めない・上司からのチャットを読み飛ばしてしまい業務に支障が出るといった例があります。
仕事を選ぶときにも、自分の得手不得手を考えて、適職につく必要があるのです。
大人の発達障害の治療法
はじめに、大人の発達障害は完治するのかということですが、完治することはありません。
しかし治療を行うことである程度カバーでき、スムーズに生活できる環境を整えることはできます。
一般的な治療法としては①薬物療法、②認知行動療法などが挙げられます。
認知行動療法とは、日々起きる問題と、その時に生じるネガティブな感情、さらにそれらに対する具体的な生活改善策を紙に書き出すことによって、心の中を整理させていく心理療法です。
生活改善策としては、例えば、スケジュールを可視化することや自己判断せず他人を積極的に頼ること、アプリ等を使ってアラーム・お知らせ機能を活用するなどがあります。
自分の特性をよく理解し、補うようなツールを積極的に使うことで、職場でもより快適に仕事ができるかもしれません。
大人の発達障害の相談先
大人の発達障害の相談先についてご紹介します。
専門の相談窓口
発達障害についての総合的な支援であれば、「発達障害者支援センター」と呼ばれる専門窓口があります。
大人に限らず発達障害のある方にはトータルサポートしてくれます。
本人はもちろん、親や家族でも相談可能です。発達障害から紐づく、教育や労働機関と連携を図ってくれるので支援の輪が広がります。
大人の発達障害は、メンタルケアクリニックや心療内科、精神科といった医療機関でも相談ができます。
最近は脳波による客観的な診断もなされています。
心理カウンセリング
発達障害の人は、幼少期から対人関係で苦労することが多いもので、後天的なトラウマも抱えがちです。
心理相談室セラペイアでは、FAPという特殊技法でトラウマ治療を行い、さらに、本人も自覚していないような長所や人生の方向性にについてお伝えします。
また、必要に応じて食事指導も致します。
発達障害には、小麦粉や乳製品、チョコレートなどの特定の食品が関与していて、その食品を制限することで脳内物質のバランスが整い、思いがけずに発達障害の症状が緩和することがあるのです。
こちらの記事ではトラウマとはそもそもどのようなものなのか詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
参考記事:トラウマによる心の傷はカウンセリングで克服できる?
大人の発達障害は工夫次第で過ごしやすくなる
今回は大人の発達障害についてご紹介してきました。
なかなか理解してもらえることも少なく、生きづらさを感じる方もいるでしょう。
発達障害は根本的な治癒は難しいものの、自分で働きやすい環境づくりをすることはできます。
悩んだときは専門家や相談窓口を利用してみてくださいね。