アダルトチルドレンになる原因とは?幼少期に受けた影響とACの6つのタイプ
AC(アダルトチルドレン)の昔と今、そしてFAPカウンセリングによる対処療法
アダルトチルドレンの由来と歴史
アダルトチルドレンとは、元々「アルコール依存症の親の元で子供時代を過ごして大人になった人たち」(ACOA:Adult Children of Alcoholics)の意味です。
アダルトチルドレンという言葉は、1970年代にアメリカでソーシャルワーカーたちが使い出した言葉です。
彼らがアルコール依存症の患者のケアをしているときに、その家族のメンバーの中に情緒的な傷があって大人になっても社会生活に支障をきたしている人たちが多いことに気がついて、彼らのことをアダルトチルドレンと名づけたのです。
1981年にソーシャルワーカーで自身もアダルトチルドレンであるクラウディア・ブラックが「私は親のようにならない」という本を出したことからアダルトチルドレンのための自助グループが全米の至るところにできるようになりました。
ブラックはアルコール依存症に限らず、虐待、共依存、離婚、貧困などにより健全な機能を失った家族(機能不全家族)で育った人々の病理としてアダルトチルドレンをとらえていました。
少し砕いていうと、大人としての鎧の中に、傷付いたインナーチャイルド(内なる子供)をもっている人のことです。
そして、ビル・クリントン元大統領が自らをACであると大統領選挙中に明言して話題になりました。そのことでさらにアダルトチルドレンという言葉が有名になったのです。
アダルトチルドレンが生まれる機能不全家族の特徴とは
家族とは社会生活の最小単位です。
この世に生を受けた人間は、まず家族の中で対人関係のあり方、世の中のルールを少しずつ学んでいきます。また、家族とは、心身共に健康に成長するための安らぎと団らんの場です。
しかしながら、その機能が健全に働かない「機能不全家族」で育つとアダルトチルドレンと呼ばれる症状が生じるといわれます。
アダルトチルドレンを生み出してしまう「機能不全家族」とは具体的にどのようなものなのか。
その特徴についてみてみましょう。
特徴①親がアルコール依存症だった
前述のとおり元々アダルトチルドレンという言葉はアルコール依存症の親の元で育った子供を指した言葉です。
アルコール依存症者には、一般的な家庭のルーティンが存在しません。
家にあるお金を全部アルコールに費やしたり、子どもにお酒を買いに行かせたり、借金をしたりアルコールを手に入れるためならどんなことでもします。
本来家庭は安らぎの場であるはずなのですが、アルコールが切れて暴れたり、暴言を吐いたりする親元では、精神的に不安定になり、身体的にも不調をきたすようになるのです。また、その状態を普通と思い込み、大人になってから自身も何かしらの依存症に陥ることもあります。
特徴②コミュニケーションの不全
現在では「機能不全家族」とは、アルコール依存症の病理に限らず、何らかのかたちで家族としての機能を失った家族のことを広く指します。
家族間のコミュニケーションが一方的で会話になっていなかったり、親が親としての役割を放棄したりすることで子供の精神的健康が阻害されます。
また、一見愛情があるように見えていても、共依存関係であったり、親の価値観を押し付けていたり、親が絶対的な存在として支配していることが多いです。
例えば、父親が自分の子供に無関心で、それを不満に感じた母親がヒステリーを起こし、子供に対し日常的に八つ当たりをするといった状況もこれに該当します。
健全なコミュニケーションのない家庭環境で育った子供は、自分の気持ちを押し殺ししていきていくため、自分で考えることをやめてしまいます。
アダルトチルドレンの中には極端に優柔不断であったり、自分を犠牲にしてしまったり、大人になってからもストレスを抱えて生きている人が多いです。
特徴③虐待がある
「機能不全家族」には虐待がつきものです。
虐待とは親が子供に何かしらの方法で、苦痛を与える行為のことです。
子どもの体に物理的な苦痛を与える身体的虐待や、暴言を吐いて人格を否定したり怖がらせたりする心理的虐待、性的な行為を強要したり見せたりする性的虐待などがあります。
また、衣食住を適切に与えず、教育や医療も受けさせないといった育児放棄(ネグレクト)も虐待の一種です。
虐待を受けると、その辛い現実から逃げるために、親を怒らせないよう常に機嫌をうかがったり、無理していい子を演じたりして自分で自分を虐待から守ろうとします。
大人になってもその思考の癖や行動が抜けず、過度に気を使ったり深読みして空回りしたり、人間関係に支障をきたしてしまうのです。
特徴④「毒親」による育児・教育
毒親とは子どもの個性を尊重せず、自分の意のままにコントロールしようとする親のことです。
必要以上に子どもに干渉したり、兄弟や友だちと比較したりして子どもの成長機会を奪います。
褒められることがないため、子供は自己肯定感が育ちません。
自信がなく、社会に出たときにも常に人に流されてばかりで自分の意見を持てず、依存的な性格になってしまいます。本来持っているはずの能力を発揮することもできません。
親になってからも毒親のトラウマが抜けず、無意識に自分の子供にも同じようなことをしてしまいやはり「機能不全家族」を作り出してしまう傾向があります。
アダルトチルドレンの6つのタイプ
アダルトチルドレンには大きく分けて6つのタイプがあります。子どものころにどんな役割を担っていたかでタイプは変わります。
タイプごとに詳しくみていきましょう。
タイプ①ヒーロー(英雄)
ヒーローは親の期待に応えるため、とにかく努力するタイプのアダルトチルドレンです。
スポーツで優秀な成績をおさめたり、学校の成績が常にトップクラスだったり真面目でしっかりものの優等生タイプと見られることが多いでしょう。
しかし、努力の原動力は、親が喜びほめたたえてくれることです。自分の充実感よりも、家庭内の雰囲気に気を配り、親に怒られないために頑張るのです。
そのためいつも良い成績を納めなければならないと自分を追い込みます。家庭の中でも、自分が頑張って家族を支えなければという使命感が強いのです。
完璧主義でもあることから、失敗や挫折をした時に人に弱みを見せられず、孤独感を抱え込みやすいタイプと言えるでしょう。
タイプ②スケープゴート(生贄)
スケープゴートはヒーローとは逆で、周囲の気を引いて注目されるためにわざと悪い行いをします。
わざと悪者になって怒りの矛先になり、家族の中の「悪」を一手に引き受けるゴミ箱のような存在にみずからなるのです。
例えば、両親の仲が悪いのであれば、自分が問題行動を起こすことで「ダメな子供をどうにかしなければ」と両親に思わせ、機能不全に陥った家族のつながりを形だけでも保たせようとします。
自分が犠牲になり、つねに悪者扱いされ続けるので自己肯定感がさらに低くなり自分に自信が持てない人が多いものです。
また、小さいころからネガティブな感情をぶつけられ続けてきたため、身の回りで良くないことが起こったときに自分は関わっていないのに、自分が悪いような罪悪感に陥ってしまうこともあります。
タイプ③ロスト・ワン(存在しない子)
ロスト・ワンは存在しない子としてとにかく目立たずひっそり生きています。
ネグレクトや過干渉な親を持ち、これまでの経験から自分の意見を持っても意味がないとあきらめの気持ちが強いです。
そのため自分の意見を主張しません。
家族旅行中にいなくなっても誰も気が付かないほど静かで空気のような存在です。
家族と関わると自分が傷つくと分かっているので、自分から関わらないようにして心を守っているのです。
タイプ④プラケーター(なだめ役)
子どものころから他人の顔色をうかがい、気持ちを察知する能力が高いのがプラケーターです。
特にネガティブな感情に共感し、相手を慰めます。例えば、家庭で父親に対して怒っている母親に寄り添って話を聞くなど、相手の行動の良し悪しに関係なく感情をケアします。
しかし、目的は相手の問題を根本的に解決することではなく、なだめ役を演じることで自分の存在意義を確認することです。
家族の関係をよくしたいというのも家族のためではなく、あくまで自分がマイナスの感情に飲み込まれないよう、自分を守るためにやっているのです。
大人になっても感情を爆発させた人に寄り添おうとするため、人に利用されやすい傾向があります。
タイプ⑤ピエロ(道化師)
ピエロタイプの人は、いつも家庭内ケンカやもめごと、重苦しい空気を避けなければと緊張状態の中で過ごしてきました。
そのため、プラケーターと同様、場の空気や他人の気持ちを読むのが得意です。
少しでも不穏な空気を察知すると、冗談を言って笑わせたり、踊ったりと明るくひょうきんものとして場を和ませます。
しかし本人はこの悪い空気をどうにかしないといけないという責任感からそのキャラクターを演じています。可愛く明るくふるまわないと自分のせいで家族の機嫌を損ねると本気で思っているからです。
こうしてピエロタイプのアダルトチルドレンは自分の感情を仮面の下に隠し演じるため、つらくても本音を知られないように我慢をして生活しています。
自分の感情を吐き出せる場所もないので、明るいキャラクターとは裏腹に、実は大きな孤独を抱えているのです。
タイプ⑥イネイブラー(世話焼き)
プラケーターは家族の感情に共感するだけなのに対し、イネイブラーは機能不全に陥った家族の中で実際に行動を起こし問題自体を解決しようとします。
例えば、育児放棄(ネグレクト)で何もしない母親の代わりに幼い兄弟の世話をしたり、お金を家に入れない父親の代わりに学校へはいかず、自分が働き一家を支えたり、子どもでありながら自己犠牲を払い家族の世話を引き受けます。
アルコール依存症の親のためにダメだと理解しつつもお酒を用意するのもこのイネイブラータイプです。
もちろん世話を焼いても家族や親が抱えている問題が解決するわけではありません。
しかし、本人は自己犠牲を払っているとは微塵も思わず、この世話焼きこそが自分のアイデンティティとすら思っているため共依存に陥ってしまうのが特徴です。
日本でのアダルトチルドレンの概念
日本では80年代後半にブラックが来日してからアダルトチルドレンの概念が知られるようになり、私の恩師でもある斎藤学の著作によって広まることになりました。
斎藤は引きこもりや摂食障害なども依存症のカテゴリーに入れたことから、それに伴ってアダルトチルドレンという言葉の意味合いもかなり広いものになりました。
その人が何となく生きづらさを感じており、その原因が家庭環境にあると考えればその人はアダルトチルドレンということになるのです。
元々アダルトチルドレンという言葉は医学用語ではないために明確な定義がなく、一時期週刊誌などでもその意味合いを十分に把握しないままに安易に取り上げられていました。
また、アダルトチルドレン(AC)に限らず、日本社会の中で様々な心の病気をアルファベットの頭文字で表すこと(PTSDやADHDなど)に違和感をもつ人もいるでしょう。
しかしながら、何とか障害、何とか病とかいう深刻な印象を与える日本語よりも、軽い感じの英語のキーワードを使うことにより、「私もACだ」、「私の夫もACだ」という感じで多くの人たちが口を開くことができるようになったことは意味があると思います。
自分の問題を言語化して他者にシェアするところから癒しは始まるのです。アメリカでアダルトチルドレンという言葉が広まったために家庭内暴力や近親相姦といった問題が露見することになったように、日本でも家庭という密室の暗部に光が当てられるようになったのです。
アダルトチルドレンの自助グループ、認知行動療法
アダルトチルドレンという概念はかなり曖昧なものというお話をしましたが、いわゆる不安障害(PTSD、パニック障害、強迫性障害、全般性不安障害)や境界性パーソナリティ障害などの医学的なカテゴリーとそれらの予備軍を含むものがアダルトチルドレンといえるでしょう。
そして、そのようなアダルトチルドレンの病理に共通するのは、先に述べたとおり幼少期の家庭環境の問題なのです。
健全な家庭的連帯意識を取り戻すという意味において、アダルトチルドレンの人たちが集まり、自らの体験をシェアし、相手の話を聴いて共感し合う自助グループは大変有効なものです。
ただ、家庭内で起きた根深いトラウマを自助グループの中ですべて見つけるのは難しいことです。
自助グループでは棚卸し作業というかたちで自らの生い立ちを振り返る作業があるのですが、自己内省だけでは、無意識の底に沈んでいる本当のトラウマを見つけることはできないのです。
或いは認知行動療法で間違った思考パターンに気が付いて行動を切り替えていくといったことも有効かと思いますが、やはり幼少期のトラウマをカウンセリングを通して解消しなければ根源的な解決は難しいものです。
FAPカウンセリングでのACからの回復のイメージ
FAPカウンセリングでは、その人が生きづらさを感じている本当の原因にフォーカスします。
幼少期からさらに遡りバーストラウマ(胎児期のトラウマ)にまで行き着くことも多いのです。
心の表面に雲をかけているトラウマを取り去ることによって、抑圧されていたインナーチャイルドが開放されていきます。
そうすると、そのインナーチャイルドのさらに内側に元々備わっていたその人本来の生き方が自ずと表面に引き出されてくる、その人らしさが発揮されてくる。
それが私の抱いているACからの回復のイメージです。そして、FAPカウンセリングはそのための最適なツールです。
心理相談室セラペイアでは、脳科学と東洋医学を統合した「FAP」という技法を中心にして、アダルトチルドレンをはじめとした、さまざまな心の病気を治療・改善させるためのカウンセリングを行っています。