「DVの解消にカウンセリングは効果的?」
「そもそもDVってどんな状態?」
「DVの原因になりやすい男性の特徴を知りたい!」
DVは「Domestic Violence」の略称で「家庭内暴力」と訳されますが、主に夫婦間もしくは恋人間の暴力行為を指します。
2001年のDV防止法の制定とその後の改定により、DVは犯罪として社会的に認知されるようになりましたが、その実態は未だ深刻な社会問題です。
被害者でありながら逃げられないというケースも少なくありません。
そこで本記事では、DVをしてしまう男性の心理や特徴、 DV被害者に効果的なカウンセリングを、心理学のプロが詳しくお伝えしていきます。
DVに悩む方やカウンセリングを検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
そもそも「DV(ドメスティックバイオレンス)」とはどんな状態を指す?
まず、そもそも「DV(ドメスティックバイオレンス)」とはどんな状態を指すのでしょうか。
主な特徴としては、以下の6つが挙げられます。
- 身体的暴力
- 精神的・心理的暴力
- 性的暴力
- 経済的暴力
- 社会的隔離
- 子どもを使った暴力
それぞれ解説していきます。
種類①身体的暴力
DVの特徴としてはじめに解説するのは「身体的暴力」です。
直接的な身体的暴力により、ときには命の危険に晒されたり、重篤な後遺症につながるものです。
また、後述するとおり、身体に危害を加えられたときの恐怖感はトラウマとして残るものです。
こちらの記事ではトラウマとはそもそもどのようなものなのか詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
参考記事:トラウマによる心の傷はカウンセリングで克服できる?
種類②精神的・心理的暴力
DVの特徴として2つ目に解説するのは「精神的・心理的暴力」です。
これらは身体的暴力に隠れて見過ごされがちですが、暴言はもちろん、日常的な無視や嫌味、嫌がらせ、わざと冷たい態度を取ることなども精神的・心理的暴力としてれっきとしたDVです。
また「身体的暴力」にはならなくとも、壁をバーンと叩いたり、家具などを破損させ威嚇する行為もDVです。
種類③性的暴力
DVの特徴として3つ目に解説するのは「性的暴力」です。
たとえ夫婦間であっても、性的暴力は成立します。
合意のない性交渉がレイプと見做されるだけでなく、了承なく裸を見たり見せたり、裸体の写真を撮ったりする行為も性的暴力の一種です。
種類④経済的暴力
DVの特徴として4つ目に解説するのは「経済的暴力」です。
経済的暴力とは、被害者に経済的負担を課して生活を圧迫させることを目的としたDVを指します。
パートナーに生活費を渡さなかったり、金銭や財産を搾取したり、仕事を無理に辞めさせたりする行為などが挙げられます。
ときには、借金を負わせたりすることも含まれます。
種類⑤社会的隔離
DVの特徴として5つ目に解説するのは「社会的隔離」です。
わかりやすくいえば、過度な束縛です。
具体的には、仕事を辞めさせる、ママ友や趣味などのコミュニティから脱退させる、友人関係を断ち切らせる、実家へ帰さない、などが挙げられます。
種類⑥子どもを使った暴力
DVの特徴として最後に解説するのは「子どもを使った暴力」です。
これは、上記で解説した「身体的暴力」や「精神的・心理的暴力」などを、子どもにさせるDVです。
また、子どもの前で各種DVを行うこと(面前DV)もこれに該当します。
暴力を子どもが目撃することで、子供の心理的、社会的、行動的な発達に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
DVの原因になりやすい男性の性格傾向
DVがどんな状態を指すのかわかったところで、次はその原因となる加害者側の性格傾向を見ていきましょう。
DVは本来、性別に関係なく起こりえることです。
ただし、ここでは比較的被害の多い男性から女性へのDVに絞って解説していきます。
原因となる加害者の性格傾向は以下の5つです。
- 意志が弱い
- 自分に自信がない
- 女性に依存している
- 普段は優しく温厚
- 気分の浮き沈みが激しい
それぞれ見ていきましょう。
特徴①意志が弱い
原因となる加害男性の性格傾向、1つ目は「意志が弱い」です。
意志の弱さは責任感の薄さにもつながります。
真面目に働くといいながらサボってしまう、ギャンブルはもうしないといいながらしてしまう。
こうした意志の薄弱性により、暴力をいけないことと思いながらもしてしまったり、二度と暴力を振るわないと誓ってもまた繰り返してしまうのです。
性格傾向②自分に自信がない
原因となる加害男性の性格傾向、2つ目は「自分に自信がない」です。
自分に自信がない人ほどプライドが高いという話を聞いたことはないでしょうか。
自分に自信がないために、些細な注意やダメ出しに対して過剰に反応してしまい、結果としてDVにつながることがあります。
性格傾向③女性に依存している
原因となる加害男性の性格傾向、3つ目は「女性に依存している」です。
冒頭のDVの解説にもあったとおり、DVは「束縛」めいた側面も持ち合わせています。
また、家庭内で暴力を起こしていることからもわかるとおり、DVをする男性は、その女性にこだわっているのです。
こちらの記事では依存症の特徴や原因について詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
参考記事:依存症にカウンセリングは効果的?特徴や原因も詳しく解説!
性格傾向④普段は優しく温厚
原因となる加害男性の性格傾向、4つ目は「普段は優しく温厚」です。
これはある種の結果論でもありますが、すぐに別れない、DVがDVとして日常化してしまっているというケース、女性が離れない理由は、まさに男性の優しさです。
普段は優しいから、怒りやすいだけでそのあとすぐ謝ってくれる、と許していては悪循環が続きます。
性格傾向⑤気分の浮き沈みが激しい
原因となる加害男性の性格傾向、5つ目は「気分の浮き沈みが激しい」です。
ここまで、DV加害男性の性格を4つ紹介してきましたが、総じてDV加害男性は「精神的に弱い」のです。
精神的なセルフコントロールがうまくできず、そのため気分の浮き沈みも激しい傾向にあります。
DVをしてしまう男性の本質的な特徴
ここまで、原因となる男性加害者の性格傾向を5つ紹介してきました。
ここからはより踏み込んで、DVをしてしまう男性の本質的な特徴について、同じく5つ紹介していきます。
その5つとは、以下のとおりです。
- 相手をコントロールしたいと考えている
- 過去にDVを受けていた
- 母親の愛情不足
- 過保護に育てられた
- 愛情表現と勘違いしている
それぞれ解説していきます。
特徴①相手をコントロールしたいと考えている
DVをしてしまう男性の特徴、1つ目は「相手をコントロールしたいと考えている」です。
自信がなく女性に依存している男性は、やがて見捨てられたくない、離れられたくないという感情から、相手をコントロールしようと考えます。
はじめは言葉で説得を試みるでしょうが、それが叶わないとわかった途端、次第に態度や行動でコントロールしようと働きかけてしまいます。
特徴②過去にDVを受けていた
DVをしてしまう男性の特徴、2つ目は「過去にDVを受けていた」です。
幼い頃に自分が暴力を受けていた、あるいは両親間でのDVを見ていたという人は、自分も同じ手段で家庭をまとめようとしてしまう傾向にあります。
実際、内閣府の調査によると、18歳までに暴力を受けたことのある男性は「しつけや教育のために夫が妻を叩くのはやむをえないことである」と答える割合が多くなっています。
一方、女性の場合には真逆になることも内閣府の調査で判明しています。
幼少期にDVを受けたことのある女性は暴力に対する恐怖心が根強く残り、大人になっても、暴力には賛成できない場合が多いようです。
特徴③母親の愛情不足
DVをしてしまう男性の特徴、3つ目は「母親の愛情不足」です。
誤解されやすいのですが「実際に母親が愛していたかどうか」は関係ありません。
大切なのは「本人が愛されていた実感を持っているかどうか」です。
母親は「わが子を愛していた」と思っていても、子供は「愛されてなかった」と感じてしまう心のすれ違いはよく起こることです。
その不満は、やがて母親を重ねたパートナーへDVというかたちでぶつけられてしまうかもしれません。
特徴④過保護に育てられた
DVをしてしまう男性の特徴、4つ目は「過保護に育てられた」です。
母親の愛情不足もDVの原因になりえますが、過保護に育てられることもDVの原因になりえます。
何でもしてくれた母親とパートナーを対比し「この女性はなぜ自分の思うがままに動いてくれないのか」と不満を募らせ、DVというかたちで表出することがあります。
特徴⑤愛情表現と勘違いしている
DVをしてしまう男性の特徴、5つ目は「愛情表現と勘違いしている」です。
DV加害者は、往々にして「私はパートナーを愛している(この行為も愛情表現だから誰も咎めるべきでない)」とあげつらうことがあります。
しかし、それは大きな勘違い。
愛の定義は諸説ありますが、愛しているから許されるというわけでもありません。
本人が愛情表現のつもりでも、相手にそうと伝わっていなければ、本当の愛とはいえないでしょう。
DVの被害者が逃げられない理由
ここまで、DV加害男性の特徴を解説してきました。
ところで、 DVの被害者はしばしば「逃げられない」と思ってしまうのを知っているでしょうか。
実際、それによってDVが長い期間表沙汰にならないケースも少なくありません。
ここでは、被害者が逃げられないといわれる理由を、以下の4つの観点から解説していきます。
- DV男は外面がいい
- DVの原因が自分にあると考えてしまう
- 「逃げる」ことも恐怖に感じてしまう
- 精神疾患になってしまう
それぞれ見ていきましょう。
理由①DV男は外面がいい
DVの被害者が逃げられない理由としてはじめに解説するのは、「加害者は外面がいい」場合が多いということです。
DV加害者は社会的隔離を行ったり、そこまでいかずともパートナーが自分の元を去らないか常に意識を向けています。
そのため、家の外などの公の場ではDVらしい行動を見せません。
それどころか、DV男は、職場や近隣の人たちに対して、常識をわきまえた社会人、良きご主人で通っているものなのです。
そのことから、DV被害者は「第三者に言っても信じてもらえないのではないか」「真剣に取り合ってくれないのではないか」と考えてしまうのです。
理由②DVの原因が自分にあると考えてしまう
DVの被害者が逃げられない理由として2つ目に解説するのは「DVの原因が自分にあると考えてしまうから」です。
一般的に、DVは何度も繰り返されます。
暴力を繰り返し受けるなかで、被害者の脳は「自分に原因がある。自分が悪いのだ。だから自分が変わればこの状況も変わる」と、錯覚してしまうのです。
理由③「逃げる」ことも恐怖に感じてしまう
DVの被害者が逃げられない理由として3つ目に解説するのは「『逃げる』ことも恐怖に感じてしまうから」です。
DVを繰り返し受けた人の脳には生理的な変化が生じ、「逃げたら何されるかわからない」という恐怖感が増大していきます。
そして、暴力と親切を交互に受けるなかで「従っていた方が安全だ」と考えてしまい、さらに余計に逃げられなくなっていきます。
理由④精神疾患になってしまう
DVの被害者が逃げられない理由として最後に解説するのは「精神疾患になってしまって」というケースです。
DVが原因で、うつ、不安障害やPTSD、解離性障害などにかかってしまうことも少なくなく、そうなると逃げる気力が奪われます。
精神疾患以外でも、人の脳はDVなどの暴力や監禁を繰り返し受けて逃げられない状況が続くと「学習性無力感」という現象が発生し、たとえ逃げることが可能な状況でも逃げる気力を失ってしまいます。
DV被害者の安全の確保について
DVは犯罪行為であり、いかなる理由があっても許されないことです。
まずDV専門の窓口にご相談下さい。
法的な措置についても教えてもらえるでしょう。
身体的な暴力により、命の危険を感じるほどであるならば、シェルターなどに避難して何よりもまず身の安全を確保することが第一です。
DV被害者へのカウンセリングについて
身の安全を確保し、精神的にもある程度落ち着きを取り戻した状態になれば、カウンセリングはとても有効です。
DV被害に至ってしまったいきさつを振り返り、今後同様なことを繰り返さないためにカウンセリングを受けることをお勧めいたします。
具体的なカウンセリングの手順は以下の4つです。
- 自責的・自罰的思考への気づき
- 自らの本心を語る
- トラウマの解消
- 本来の自分らしい人生を生きる
それぞれ詳しく解説していきます。
カウンセリング➀自責的・自罰的思考への気づき
DV被害者は、DV加害者と同様にその生い立ちにおいて親から虐待を受けたり、両親のDVを見て育ってきた場合が多いものです。
そのような環境にいると、自分が悪い子だから怒られたり、両親が争うんだという自責的な思考に陥ってしまうものなのです。
まずカウンセリングによって、自らのネガティブな思考パターンや罪悪感といったものを客観的にみつめていきます。
そして、自らの生育歴のなかで生じた「認知の歪み(極端な思考の癖)」に少しずつ気が付いていきます。
カウンセリング➁自らの本心を語る
DV被害者は全般的にセルフイメージが低く、生きづらさを感じているものです。
DVを拒否せずに受けることで、「この人には私がついていなければダメ」といった思いをもち、被害者のままでいることで自らの存在意義を見出す傾向があります。
しかしそのことは、さらにDVを増長させる結果となってしまいます。
認知の修正とともに、本当は相手にどうしてもらいたいのか、さらに、私自身は自らの人生の中で何をしたいのかといった未来の展望についても考えていきます。
カウンセリング③トラウマの解消
一般的なカウンセリングは上記の2つが中心となりますが、DVからの根本的な解放のためには「トラウマの解消」が必要なのです。
認知の歪み、ネガティブな思考、セルフイメージの低さは、生育歴の中で受けたトラウマによって引き起こされているものなのです。
そして、トラウマの本体というものは無意識的なものであり、当人が気が付いていない場合が多いのです。
ただ、トラウマのフラッシュバックというかたちで、ときにそのトラウマの断片が顕在化してきて当人を苦しめるのです。
カウンセラーがそのトラウマの全体像を丁寧に読み解いていきます。
トラウマを解消することにより、心の重石がとれ、未来へ生きる力が生まれてきます。
カウンセリング④本来の自分の人生を生きる
現状の問題、過去の問題を解決したあとは、未来の人生にフォーカスします。
先に述べたとおり、DV被害者は、DV加害者と同様にその生い立ちにおいて親から虐待を受けたり、両親のDVを見て育って来た場合が多いものです。
そのためにDV被害者はDV加害者の心情に共感してしまうところがあるのです。
ですから、DV被害者はDV気質の人とふたたび付き合ってしまったり、もとのDV加害者の元へ戻ってしまったりすることが珍しくありません。
トラウマの治療によって、大よそのところその悪循環を断ち切れるのですが、さらに本来の自分の人生を生きるためには、未来のピジョン作り、目標設定ということが必要となります。
しかしそれは、表面的なポジティブ思考や明るいイメージ作りではありません。
今までの苦しい人生を切り捨てるということではなくて、それらがあったお陰で人生の深い意味にも気づけたという内省をしつつ、今後の人生の歩みについて考えていきます。
DV問題の根本的な解決にはカウンセリング
DV被害は、第三者への伝わりにくさやDVの原因が自分にあるのではないかという不必要な自責の念、逃げる恐怖や精神疾患から、なかなか表に出づらい問題です。
しかし、DVを含めそれを発端とした悲惨な事件も多くあります。
まずはカウンセリングを経て、メンタルの回復や今後の人生設計について冷静に見つめ直しましょう。
心理相談室セラペイアでは、以上のカウンセリングの3つのステップすべてを含めたカウンセリングを行っております。
カウンセリングをご希望の方は、お気軽にご相談ください。